さいたまの起業家
武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役 大谷 義武さん
「ありがとう」と言われる会社を目指して 「三方よしの経営」で躍進
賃貸アパートやマンションなど、投資用不動産の売買や管理を手掛ける武蔵コーポレーション。今年創業18年を迎える。コロナ禍でも売上は250億円、不動産の管理戸数は2万8千戸を超え、飛躍を続ける。その秘訣は?創業者の大谷義武社長にお話を伺った。
古風な考え方は祖父の影響
私は、挨拶、報告、親孝行などの礼儀作法をきちんとできることが一番大事だと思っています。会社でも子育ても一緒です。毎年新入社員には、初任給で両親にお礼をするように言っています。感謝を込めて氷川神社、護国寺にお参りに行き、墓参りにも行きます。祖父の影響を受けたのでしょう。
私は熊谷で生まれ育ちました。両親は教員で共働きだったので祖父と過ごす時間が多く、「日本はいい国だ」といった話を日々聞かされていました。小学校は小児喘息のため、半分位しか通えませんでした。親は、引きこもり気味だった私の環境を変えるため、私立中学校に行かせてくれました。高校までの一貫校でしたが2~3か月前から受験勉強をし、浦和西高校に合格、その後東京大学に進学しました。
社会に役に立つことを仕事に
大学を卒業後、三井不動産に就職し、ショッピングセンターの開発に携わりました。仕事は楽しかったのですが、大型店舗ができて周辺の商店街がシャッター街になっていくのを見て、使命感を持てませんでした。退職し、模索した結果、自分は経営者が向いていると考えました。
土地の相続で自身でアパートを建てる機会があり、これから不動産を運用したい、アパート経営を任せたいという人が増えていく、ここにビジネスチャンスがあると思い、2005年、さいたま市にて収益用不動産事業で起業しました。
ニーズを捉えて事業は伸長
30歳のとき1人で始めた会社が、昨年社員数は250人、売上は250億円を超えました。地主さんの高齢化が進み、アパートの管理が自身では困難な人が増えています。だけど、中途半端な不動産屋に管理を任せてもうまくいかない。すると銀行が地主に当社を紹介してくれました。
当社の理念は「三方よしの経営」です。お互い様で、会社、社員、お客様、お取引先、地域のためになる会社を目指しています。例えば、取引先の利益も考えて工事を発注する。そうすると当社の応援団となってくださり、人やお客様を紹介してくださるので会社も伸びるのです。
卓球チーム『T.T彩たま』のトップパートナーなどを務めているほか、協賛した子どもの柔道大会をテレビ埼玉で放送するなど、埼玉のスポーツ支援にも力を入れています。若者への奨学金の給付も行っており、夢は生まれ育った地域に貢献し学校を創ることです。月1回の氷川神社の清掃は15年位続けています。
気遣いも経営のカギに
小学2年生頃から、人の気持ちがわかりすぎて生きづらさを感じて悩んでいました。でも、人の気持ちが読めるのは先天的な特性で、だから経営もできるのだと思います。会社では体調が悪そうな社員がいたら差し入れをしたり…。気分転換は、子どものサッカー応援と、仲間とお酒を楽しむことです。
地元で長く働きたい人を採用へ
全国で空き家が急増し街づくりの視点でも問題になっています。当社は空き家を買い取ってリノベーションし再利用するビジネスを展開し、テレビ番組でも紹介されるなど、注目されています。
一方、お客様は増えるけれど社員の確保が追いつかない、また、社員が辞めてしまうという悩みがあります。妻は当社で総務人事を担当しており、何かあると相談しています。
当社は人材確保のため、2018年に東京に本社を移し、事業もさらに拡大しました。これからは地元で長く働きたいという人を採用していきたいと考えています。そのため、今夏、本社機能を大宮に移し、東京本社とハイブリッドでやっていく予定です。地域の経済にも貢献したいですね。
会社に大きさを求めていないので、何年後に何億にするという目標は掲げていません。当たり前のことができて、愛される、品格のある会社にしたいですね。その結果、売上が上がれば、いいと思っています。
(プロフィール)
大谷 義武(おおや よしたけ)さん
1975年熊谷市生まれ。1999年東京大学経済学部卒業後、三井不動産に入社。2005年同社退社後、武蔵コーポレーションを設立。執筆、全国各地での講演も積極的に行う。著書に『絶対に後悔しない新卒の「会社選び」』『大企業は20代でやめなさい』など多数。社名の「武蔵」は武蔵一宮氷川神社から。